経済産業省による新たな電磁波基準値に抗議し、
「リスクコミュニケーション」の推進を求める声明

経済産業省の「電力設備電磁界対策ワーキンググループ(WG)」が「報告書(案)」を概ね固めたことについて、その内容、および、WGの審議・運営等の問題点を明らかにし、これらに抗議するとともに、リスクコミュニケーションの推進を求める声明を当連絡会議が発しました。

経済産業省による新たな電磁波基準値に抗議し、
「リスクコミュニケーション」の推進を求める声明

2007年12月5日
電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議
http://denziha.net/

 「経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ(WG)」は、本日、同WGの報告書案を概ね固めました。これを受けて、同省は超低周波磁場の規制値を設けるものと見られます。
 しかし、本WGでは、電磁波に長期的に曝露されることによる慢性的な健康影響の可能性を示した疫学調査について正当な評価を行いませんでした。このようなWGによる報告書に基づいた規制等では、私たち市民は安全に安心して生活することはできません。疫学研究報告を軽視したまま、WHOの勧告の内容の都合のいいところを拾って経済産業省の方針とし、日本での政策の方向付けをすることは許されません。私たちはこの報告書案に抗議をします。
 私たちはここに、本WGならびに本WGを設置した経済産業省の問題点を明らかにするとともに、市民が納得できる電磁波対策がなされるよう、経済産業省だけではない関係各省や、「電磁波は危険ではない」旨主張している本WGの研究者とは異なる見解を持つ研究者、そして、電磁波問題に取り組んできた市民団体等、すべての利害関係者の参加による、いわゆる「リスクコミュニケーション」を進める場の設定を求めます。
 私たちは「電磁波から健康を守る百万人署名」の取り組みを始めました。多くの市民の声によって、リスクコミュニケーションをはじめ、電磁波から市民の健康を守るための諸施策の実現を目指していきます。

1.電磁波による健康影響についての評価の問題点

 本WGは、世界保健機関(WHO)が今年6月に超低周波電磁波と健康についての「環境保健基準(EHC)」を発表したという国際的な動きに合わせて、国内における磁場規制の整備を行うことを目的として設置されました。
 EHCは、毎日、長期にわたって0.3~0.4μT(3~4mG)を上回る極低周波磁界へ曝露することにより、小児白血病のリスクが約2倍になるという科学的証拠について「因果関係ありとするには十分強固ではないものの、懸念を抱き続けるには十分強固」であり、「慢性の影響の存在については不確実性が存在するので、予防的アプローチ(予防原則)を採用することが必要である」と述べています。
 しかし、本WGでは、「仮に曝露低減をしたからといってリスクが減る保証はない」等の発言が委員からなされるなど、これらの疫学調査結果を真摯に受けとめて予防原則の考え方を採り入れた施策を講じようという姿勢は見られませんでした。
 その結果、短期曝露については100μT(50Hzの場合)、または83μT(60Hzの場合)という基準値を設定することとしましたが、長期曝露による慢性的な健康影響については、曝露規制が盛り込まれませんでした。
 このような審議経過、および報告書の内容によっては、電磁波被曝による重大な健康影響についての不安を、市民は解消することができません。

2.本WGの構成・運営の問題点

 本WGには、規制を受ける当事者である電力業界の代表が委員として参加しました。
 また、委員である研究者のうち、少なくとも2名は、極低周波電磁波の規制対象である電力業者や、高周波電磁波の規制対象である電気通信業者から研究費を得ています。過日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の副作用を調べている厚生労働省研究班長に、タミフルの輸入販売元から研究資金が渡っていたこと等が問題になりましたが、これと同様の問題が本WGにもあります。
 その一方で、これまで電磁波と健康影響の問題に取り組んできた市民団体等は、市民団体の代表を本WGに委員として参加させるよう求めましたが、経済産業省によってこれを拒否されました。
 以上のように、本WGの委員構成は全体として公平中立ではなく、電磁波の安全性を強調する立場に偏ったものとなっています。「はじめから結論ありき」の、旧来と変わらない官僚主導のWGでした。

3.リスクコミュニケーションのあり方の問題点

 WHOは「国家当局は、十分な情報提供の上で利害関係者全員による政策決定が行われるように、有効かつオープンなコミュニケーション戦略を実施するべきである」(EHC)と述べ、「利害関係者全員による」リスクコミュニケーションの重要性を説いています。
 本WGにおいても「双方向」の「(リスク)コミュニケーション」の重要性について、複数の委員から必要性が指摘され、うち一部の委員は関係省庁の連携した取り組みが必要であると指摘しました。
 しかし、リスクコミュニケーションが必要だというのであれば、そもそも本WG自体も、市民団体等を委員に加えた双方向のリスクコミュニケーションの場とすべきでした。
 また、経済産業省は、財団法人電気安全環境研究所に委託して11月から全国各地で「電磁波の健康影響に関するシンポジウム及び講演会」を開催しています。シンポジウムや講演会という従来と変わらない“一方通行”の広報活動を、同省があえてこの時期にスタートさせた事実から考えても、“双方向”のリスクコミュニケーションを重視する意思が同省にあるとは考えられません。

4.規制の対象の問題点

 本WGにおいては、規制対象を送電線や変電所などの電力設備だけとしました。しかし、超低周波磁場は、家電製品や、室内配線などからも発生するため、規制対象を電力設備に限ることに合理的な理由はありません。WHOのEHC)も、「あらゆる電磁場発生源」を対象としています。
 室内環境全体や、公共交通機関、労働環境等も含めたあらゆる生活環境生活環境におけるあらゆる超低周波磁場発生源について、規制等の対象とすべきです。

5.電磁波過敏症についての認識の問題点

 生活環境中に一般的に存在するさまざまな電磁波によって、頭痛、皮膚の痛み、集中力欠如などさまざまな症状が引き起こされる電磁波過敏症について、本WGの委員である一部の研究者は「過敏症は、電磁界との相関性はない。電波が危ないと言われて不安になっているに過ぎない」等と発言し、電磁波過敏症が電磁波によって引き起こされることを否定しました。
 日本にも、電磁波過敏症に関する先進的な診療や研究に取り組んでいる医師・研究者が存在するにもかかわらず、そうした医師・研究者に対して本WGは何ら調査を行っていません。この点からみても、本WGは中立公平からかけ離れていると言うことができます。




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