経済産業省ワーキンググループによる報告書案に抗議し、
「リスクコミュニケーション」の推進を求める声明

経済産業省の「電力設備電磁界対策ワーキンググループ(WG)」が「報告書(案)」をまとめたことについて、その内容、および、WGの審議・運営等の問題点を明らかにし、これらに抗議するとともに、リスクコミュニケーションの推進を求める声明を当連絡会議が発しました。

経済産業省ワーキンググループによる報告書案に抗議し、
「リスクコミュニケーション」の推進を求める声明

 経済産業省の電力設備電磁界対策ワーキンググループ(以下、WG)(注)は、12月20日、超低周波磁場の規制等に関する報告書案を概ね決定しました。これを受けて同省は、比較的強い磁場への短期曝露による健康影響を防ぐために、100μT(50Hzの場合)という基準値を設定することになります。
 しかし、弱い電磁波による長期的な曝露が健康に影響する可能性を示した各国の疫学調査について、WGは正当な評価をしないまま報告書案をまとめ、長期曝露について規制しないこととしました。これでは、市民は安全に安心して生活できません。私たちはこの報告書案に抗議します。
 私たちは、WHOも推奨している「リスクコミュニケーション」の場が設けられるよう求めます。そして、経済産業省以外の関係各省や、「電磁波は危険ではない」と主張するWGの研究者とは異なる見解を持つ研究者、電磁波問題に取り組んできた市民団体等、すべての利害関係者がそのリスクコミュニケーションの場に参加することにより、市民が納得できる電磁波対策が進められるよう求めます。
 私たちは、全国30団体の連携による「電磁波から健康を守る百万人署名」の取り組みを始めました。市民の声を結集して、リスクコミュニケーションをはじめ、電磁波から市民の健康を守るための諸施策の実現を目指していきます。

2007年12月25日
電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議
http://denziha.net/


私たちは、以下の5項目の問題点などを根拠に、上記声明を表明しました。


WGおよび報告書案の主な問題点

1.電磁波による健康影響についての評価

 世界保健機関(WHO)が今年6月に発表した「環境保健基準(EHC)」は、毎日、長期にわたって0.3~0.4μTを上回る超低周波磁界へ曝露すると、小児白血病のリスクが約2倍になる、という科学的証拠について「因果関係ありとするには十分強固ではないものの、懸念を抱き続けるには十分強固」であり、「慢性の影響の存在については不確実性が存在するので、予防的アプローチを採用することが必要である」と述べています。
 しかし、報告書案では「因果関係が確認でき」ない(9頁ほか)ことのみを強調しています。

2.WGの委員構成と運営

 WGには、規制を受ける当事者である電力業界の代表が委員として参加しました。また、委員である研究者のうち少なくとも2名は、超低周波電磁波の規制対象である電力業者や、高周波電磁波の規制対象である電気通信業者から研究費を得ています。過日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の副作用を調べている厚生労働省研究班長に、タミフルの輸入販売元から研究資金が渡っていたこと等が問題になりましたが、これと同様の問題がWGにもあります。
 その一方で、これまで電磁波と健康影響の問題に取り組んできた市民団体等の代表をWGに委員として参加させるよう求めたのに対し、経済産業省はこれを拒否しました。
 以上のように、WGの委員構成は電磁波の安全性を強調する立場に偏っていると言わざるを得ません。

3.リスクコミュニケーションのあり方

 報告書案が提言している「リスクコミュニケーション活動の充実」(35頁以下)の文面は、電磁波のリスクについて「正確な情報が届いていない」ために「不安や疑問」を持っている国民を安心させるための「リスクコミュニケーション」、というトーンで書かれています。
 しかし、WHOが推奨しているリスクコミュニケーションは、すべての利害関係者の参加による「意思決定を可能とする」(報告書案7頁囲み)ための場です。
 報告書案はリスクコミュニケーションの意義を矮小化しようという意図がある、と読み取れます。

4.規制の対象

 WGは、規制対象を送電線や変電所などの電力設備だけとしました。しかし、超低周波磁場は、家電製品や、室内配線などからも発生するため、規制対象を電力設備に限ることに合理的な理由はありません。WHOのEHCも、「あらゆる電磁場発生源」を対象としています。
 室内環境全体や、公共交通機関、労働環境等も含めたあらゆる生活環境におけるあらゆる超低周波磁場発生源をも、規制等の対象とすべきです。

5.電磁波過敏症についての認識

 生活環境中に一般的に存在するさまざまな電磁波によって、頭痛、皮膚の痛み、集中力欠如などさまざまな症状が引き起こされる電磁波過敏症について、本報告書案は「症状と電磁波の曝露に関係は認められない」(10頁)と書いています
 しかし、電磁波に反応して苦しんでいる人々は、確かに存在します。そして、日本にも、電磁波過敏症に関する先進的な診療や研究に取り組んでいる医師・研究者が存在するにもかかわらず、そうした医師・研究者に対して、WGは何らの調査もしないまま、「関係は認められない」と書きました。

(注)正式名称は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ




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