電磁波から健康を守る全国連絡会 本文へジャンプ
電磁波ニュース

電磁波問題についての新しい動きなどをご紹介します。

2011年7月22日new

総務省「第6回生体電磁環境検討会」
ケース・ケース研究・電波発がん性2B評価=安全強調に躍起
 総務省の「第6回生体電磁環境に関する検討会」が7月22日に開催されました。同検討会は、委員20名中10名が過去に電波産業会の委託研究を請け負っていたことがある一方、電磁波による健康影響の可能性を示す研究を行った研究者や、電磁波障害の診療に取り組んでいる医師、電磁波問題に詳しい市民団体等は参加していない偏った構成となっています。事実上「電波は危険ではない」という国の見解にお墨付きを与えるための組織ですが、新しい情報が公表され、また、検討会構成員の方々の考え方や言動を知ることができる意味でも傍聴の価値はあります。

山口教授が注目の研究結果を報告
 この日は、まず総務省が予算を出している研究3本の報告がありました。
 そのうち、検討会構成員である山口直人・東京女子医大医学部教授は、自身らのグループによる携帯電話使用と聴神経資料の関係についての症例オンリー研究(ケース・ケース研究)結果について、おそらく初めて公の場で報告しました。
 この研究結果は、聴神経腫瘍診断時から1年前の携帯電話ヘビーユーザー(1日平均20分以上使用)の聴神経腫瘍リスクは、携帯電話を使用しない人と比べて2.74倍、また、5年前のヘビーユーザーは3.08倍というものでした(ともに統計学的有意。詳しくは本会報第67号参照)。
 国際的な学術誌『Bioelectromagnetics』に掲載されたこの論文は、この結果について「思い出しバイアス」や「発見バイアス」が作用した可能性があるとしながらも、「我々としては、この結果を全部説明できるようなバイアスの証拠を見いだすことはできなかった。したがって、リスク上昇の可能性は否定し得ない。今回見いだされたこととそれを成り立たせているメカニズムについて、さらなる研究が求められる」と結論づけました。
 この論文に比べて、山口教授はリスク有りの可能性というインパクトをどうにかして薄めようと説明に腐心する様子がうかがわれました。
 たとえば、疫学研究の肝である、リスク比(2.74倍、3.08倍)について、山口氏は口頭で述べただけで、説明用スライド及び配付資料には全く記されていませんでした(!)(ただし、グラフの中の点としてのみ示されています)。
 また、「まとめ」と題した最後のスライドには「リスクの増加が観察されたが、それが真のリスクを反映するか、バイアスを反映するかは断定できない」と書かれています。上記の論文の結語部分より、だいぶ消極的だと感じるのは、筆者だけではないでしょう。
 「まとめ」にはまた、「(携帯電話使用が聴神経腫瘍に対し)真のリスクを反映するとしても、診断5年前には腫瘍は既に存在しており、携帯電話による通話は腫瘍の発生には直接は影響しない可能性が高いのではないか」という、論文の結語部分にはない記述もありました。
 自分たちの研究成果であるにもかかわらず、自分の政治的立場を優先し、「安全」だと印象づけようとする-山口教授の姿はそのように見えました。

携帯使用で睡眠の質低下電波の影響は確認されず
 検討会構成員である宇川義一・福島県立医科大学神経内科教授らのグループによる「携帯電話からの電波の睡眠に対する影響」の研究結果が報告されました。
 アンケート調査結果では、携帯電話の使用時間が長いほど、睡眠の質を低下される傾向が示されました。しかし、携帯電波の曝露実験では、電波曝露群と擬似曝露群とで睡眠の質の違いは確認されなかったとのことです。
 電波との関係は認めなかったものの、携帯電話使用で睡眠の質が低下するという研究結果がこの検討会で報告されたことに、ちょっと驚かされました。

発がんの可能性でも「大丈夫」?
 本会報の冒頭記事でも報告されている通り、国際がん研究機関(IARC)が、高周波電磁波の発がん性を2B(発がん性の可能性がある)に分類しました。
 今回の決定を行ったIARCのワーキンググループメンバーだった、検討会構成員の宮越順二・京都大学生存圏研究所特定教授が解説しました。もっとも、守秘義務があるとのことで、医学誌『ランセットオンコロジー』(online June 22,2011)に掲載された範囲での解説のようでした。
 宮越教授によると、電磁波の2B分類について詳細をまとめたモノグラフは、今年秋から来年にかけて国際がん研究機関から出版される予定とのことでした。
 宮越教授による報告の後、検討会座長の大久保千代次氏が「WHOによるリスク評価(環境保健基準の発表)は、来年か再来年になる。それまで待てない、不安であるという人は、用心政策としてIARCも言っているように、ハンズフリーキットやメール利用によって頭部への曝露を減らすという方法もある」と指摘しました。
 また、大久保氏が「2Bについて市民へどう伝えれば良いのか、リスクの専門家として意見を聞きたい」と発言を求められた、検討会構成員の西澤真理子氏は、「電波は2Bだが、2Aにはアクリルアミドというポテトチップスに入っているものもある。リスクはほかのリスクと比較しないと人間は理解できない。発がん因子ということでは、30%がたばこ、30%が食事(野菜不足など)、5%が運動不足だ。こういうものと全体的に考えた中での発がん性だと分かるように伝えないといけない」という趣旨の発言しました。
 たばこや食事、運動に気をつけていたが、電磁波には警戒感をまったく持たずに不用意に被曝し続けた結果がんになる人がいても、そういう(数%以下の?)の人々は西澤氏にとってはどうでも良いようです。
 また、宇川教授は「科学をやっていると『可能性がない』ということはほとんどない。実は『可能性がないとは決定できないけどほとんど大丈夫だ』であっても、どちらなのかと言えば『可能性がある』になってしまう。マスコミの方は『可能性がないことは言えない』というと、あるんだということになってしまう」という趣旨の発言をしました。
 また、構成員の多氣昌生首都大学東京教授は、先に大久保千代次氏らがハンズフリーキットに言及したことについて、「念のため言うが、この検討会がハンズフリーを使うことを推奨しているわけではない。また、今の第3世代の携帯電話の出力は平均すると第2世代の約100分の1という報告もある。携帯電話にあまり神経質になりすぎないということも大事だ」という趣旨の発言しました。
 このような検討会が存続している限り、電磁波に苦しむ人が救われ、また、新たな犠牲者を出さない社会の実現は難しそうです。(網代)


2011年5月31日new

国際がん研究機関が、高周波電磁波(ラジオ周波数電波)を「2B(発がん性がある可能性がある)」と評価
 国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話などで使用する高周波電磁波を「グループ2B(発がん性がある可能性がある)」と評価する結果を発表した。総務省や携帯電話事業者は今後、「電波は安全である」と言うことはできなくなった。


2011年3~4月new

海外政府等が続々、電磁波曝露抑制促す
■欧州評議会
 欧州評議会の議員会議の環境・農業・地域問題委員会は4月11日、「電磁波の潜在的危険性とその環境影響」という報告書を全会一致で採択しました。
 欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配という共通の価値の実現に向けた国際協調拡大を目的として設立され、EU全加盟国、南東欧諸国、ロシア、トルコ、NIS諸国の一部の計47か国が加盟しています。日本、米国など5カ国はオブザーバーとして参加しています。(外務省による)
 報告書は、現在の指針値以下のレベルの超低周波または高周波電磁波が、人間だけでなく動物、植物、昆虫に有害で非熱的・生物学的な潜在影響を及ぼしているかもしれないため予防原則を尊重すべきとして、以下のことなどを求めています。

  • 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)による国際指針値のもとになっている科学的根拠を見直し、ALARA(合理的に達成可能な限り低く抑える)原則を適用すること
  • 電磁波に特に不耐な(電磁波過敏症の)人々に対して、電磁波フリー地域の設定を含む特別な保護策を講じること○携帯電話など無線装置からの長期的な曝露に対して、予防原則に基づき、全ての屋内について0.6v/m(0.1μW/cm2)の許容限界値を設定し、それを中期的に0.2v/m(0.01μW/cm2)へ引き下げること(日本の規制値は、数百~1000μW/cm2)
  • 電波を常に発しているデジタルコードレスフォンやベビーフォンなどの家電についての潜在的健康影響について啓発すること
  • 学校、教室内における携帯電話、デジタルコードレスフォン、WiFi、無線LANの禁止
  • 高圧線などの電力設備と住宅の間に安全な距離を確保する都市計画施策の導入
  • ALARA原則に従い、中継基地局からの電波の許容限界値を減らすとともに、全てのアンテナについての包括的、連続的モニタリングシステムを導入
  • 携帯電話基地局などの新たな設置について、自治体、地域住民、この問題に関心がある団体と協議のうえ決定すること
  • (健康リスクを評価する研究への)公的資金配分のために、独立委員会をつくること

 欧州評議会は、加盟各国への強制力は持ちませんが、各国代表による民主的手続きに基づいた結論としての意味は大きく、これらの点において、欧州議会の決議と同様です。欧州市民の声に応える国は現れるでしょうか。

■英国
 英国保健省は3月7日、携帯電話について啓発する新しいリーフレット「携帯電話と基地局(Mobile phone and base stations)」を出版しました。前回2005年のリーフレットに比べると、世界保健機関(WHO)の見解を踏まえつつも、予防原則をより明確に打ち出し、電磁波曝露低減について具体的な対策が述べられています。
 新しいリーフレットは、携帯電話機及び基地局からの電波が健康に悪影響を与える確証的な根拠は最近10年間の研究で示されなかった、と述べています。一方で、携帯電話の(10年以上の)長期的使用による影響はまだ不明海外政府等が続々、電磁波曝露抑制促すで、より多くの研究を必要としていること、また、10代の子どもの神経系は発達途上であることなどを指摘。16歳未満の若者は重要な目的に限って携帯電話を使うこと、ハンズフリー・キットや、(携帯電話機を頭にあてる通話の代わりに)メールを活用をすることを、推奨しています。

■ロシア
 ロシア非電離放射線防護委員会(RNCNIRP)は3月3日、「携帯電話からの電磁場:子どもたちとティーンエイジャーに対する健康影響」を決議しました。
 決議は現時点の見解と科学的なデータを考慮して、2001、04、07、08、09年のRNCNIRP決議を発展させたものであり、科学者の見解を立法・行政当局へ示すとともに、公衆・携帯電話利用者への普及も図るものであるとのことです。
 この決議の一部を以下に抜粋・要約します。

 ロシア世論調査センターの2010年の調査によれば73%の人が携帯電話使用が健康に影響を及ぼすかもしれないと考えている。
 2001年以降、RNCNIRPは携帯電話からの電波(RF EMF)による子どもたちの健康影響について調査していて、健康影響の可能性について懸念を抱いている。RNCNIRPのこの立場は、ロシア連邦の強制力を持つ法令「陸上移動無線通信手段の配置と運転の衛生学的要求」を考慮している。
 2008年4月に、RNCNIRPは携帯電話使用の子どもたちへの長期的及び短期的影響についてレビューした。特に、知的能力と認識力の減退、てんかん発作、後天性痴呆、大脳神経構造変質について調べた。臨床研究は電波への慢性曝露が境界型心身障害につながる可能性を示した。2010年にロシア内外の査読付きジャーナルに発表されたいくつかの論文は、電波曝露による免疫系の反応を示した。
 携帯電話使用が引き起こす可能性があるとRNCNIRPが特定した子どもの疾患の発症率が一貫して増加していることを、2009年、10年に公表された統計データが示している。たとえば、09年までに15~17歳の中枢神経系疾患が85%増加した。


 この決議は、名指しはしていませんが、おそらくWHOなどを批判している次の記載も、非常に興味深いと筆者は思いました。WHOの見解(の一部)をひきあいにするばかりで電磁波の健康問題に向き合おうとしない日本政府との違いが際だっているからです。

 携帯電話の取扱説明書に記されている携帯電話についての安全宣言は、概してロシア国外で登録されている公共団体の勧告に基づいているが、それらは、起こり得る健康影響に対して法的にも道徳的にも責任を持っていない。それらの勧告は古くて、現在の携帯電話電波の曝露状況ともはや一致していない。

 そして、決議は、子どもとティーンエイジャーを守るための優先施策として、以下のことなどを挙げています。

  • 携帯電話などの本体に、これが電波の発信元であることを表示すること
  • 携帯電話などの取扱説明書に、有害な電波発生源であることを掲載すること
  • 18歳未満の携帯電話使用は推奨できない
  • 妊婦による携帯電話使用は推奨できない
  • 学校で携帯電話使用とそれによる電波曝露について学ぶコースが必要


2010年12月21日

周産期の携帯電話使用で子どもの行動障害のリスクが上昇
 妊娠中に携帯電話を定期的に使用すると、行動障害の子どもが産まれる可能性が高くなるという調査結果が、7日の英医学専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」に発表された。子どもが早い段階から携帯電話を使用し始めた場合、行動障害リスクはさらに高まるという。
 米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、1996~2002年にデンマークで実施された母と子の健康追跡調査「デンマーク国家出生コホート(Danish National Birth Cohort)」の対象となった7歳児2万8000人とその母親の健康状態を分析した。母親は調査の中で、妊娠中と出産後の食生活、および携帯電話の使用を含めた生活習慣に関するアンケートに回答している。
 その結果、妊娠中、出産後ともに携帯電話を使用していた母親から産まれた子どもでは、行動障害を持つ確率が50%高くなった。(AFPニュース) 


2010年12月7日

周産期の携帯電話使用で子どもの行動障害のリスクが上昇
 妊娠中に携帯電話を定期的に使用すると、行動障害の子どもが産まれる可能性が高くなるという調査結果が、7日の英医学専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」に発表された。子どもが早い段階から携帯電話を使用し始めた場合、行動障害リスクはさらに高まるという。
 米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、1996~2002年にデンマークで実施された母と子の健康追跡調査「デンマーク国家出生コホート(Danish National Birth Cohort)」の対象となった7歳児2万8000人とその母親の健康状態を分析した。母親は調査の中で、妊娠中と出産後の食生活、および携帯電話の使用を含めた生活習慣に関するアンケートに回答している。
 その結果、妊娠中、出産後ともに携帯電話を使用していた母親から産まれた子どもでは、行動障害を持つ確率が50%高くなった。(AFPニュース) 


2010年10月28日

携帯電話1日20分以上通話で脳腫瘍リスク3倍 税金投入の国内研究結果を隠す総務省
 携帯電話のヒトへの影響を調べた日本の総務省出資の最新研究で、1日20分以上通話する人たちで脳腫瘍のリスクが3倍になるという結果が10月28日、 海外の学術誌『Bio Electro Magnetics』で発表された。これまでのWHO研究とも一貫性がある結果だ。だが総務省は「国内向け発表の予定はない」としており、役所が発表しな ければ、巨大広告主(携帯事業者、メーカー各社)に不利な情報をマスコミが独自報道することはありえず、国民には知らされない。業界や役所の権益にとって都合の悪い研究結果を無視するならば、安全性の研究を総務省に任せるわけにはいかない。(My News Japan) 


2010年8月12~23日

過敏症の家族、長野から東京へ220km歩いて基地局問題訴える
 8月12~23日の12日間をかけて、電磁波過敏症発症者のAさんは、長野県伊那市の自宅から、東京のNTTドコモ本社まで約220kmを歩く「心をもって命にかえろうウォーク2010」を行った。やはり過敏症であるAさんの夫・Bさんと、長女・Cさん(13歳)も、体調等の事情に応じて一部を歩いたほか、各地の支援者も同行。歩いたのは主に午前中だけとは言え、猛暑の季節に、過敏症発症者が220km歩くという強い信念を持った行動は、道中で多くの方々との交流を生み、また、電磁波問題に取り組む団体をはじめ全国の多くの方々の共感を呼んだ。
 1999年、Aさんの家から約250m先にNTTドコモの基地局が建ってから、一家は過敏症を発症。2004年、携帯電話圏外である伊那市高遠町荊口に転居し、体調は回復へ向かった。
 しかし、自宅近くにドコモが携帯基地局を建てることに。設置場所に最も近い集落の住民の約7割が反対しましたが、不同意書を提出した住民にはドコモの説明会の案内が届かないなど問題のある進め方がされた。
 Aさん、Cさんは、7月5日にドコモ本社を訪れ、Cさんの通学路から500m以内に基地局を設置しないこと、及びAさんの自宅から半径500mを“圏外”にするよう求める、ドコモの「コンプライアンス推進委員会」委員長らに宛てた署名を提出。しかし、同月13日には基地局が設置され、同月26日からは電波の送受信が始まった。その後、永さんは頻繁に倒れるように。さらに、この署名がコンプライアンス推進委員会に届いていないことも分かった。
 このため、提出済みの署名を同委員会へ渡すこと、同委員会で厳正に審査すること、問題を多くの人に知らせ問題を共有する人と一緒にドコモ前でアピールを行うこと、道中で基地局と電磁波の問題について知らせることを目的に、今回のウォークを企画した。
 さらに署名を追加して集め、ウォーク最終日のドコモとの交渉の場で提出する予定だった。しかし、7月5日に提出していた署名がコンプライアンス推進委員会に受理されたのは、同月26日に送受信が開始された後であることが分かり、受理が遅れた理由については「ドコモ内部の問題なのでコメントする必要はない」と発言するなど、ドコモの対応が不誠実だったため、提出せずに持ち帰った。(網代)
※ウォークについて詳細はVOC-電磁波対策研究会のウェブサイトを。


2010年7月4日

条例制定の神奈川県鎌倉市でシンポジウム「携帯基地局の条例を活用しよう」開催
 携帯電話基地局の設置等の前に、周辺住民から意見を聴くことなどを義務付けた条例が今年4月1日から施行された神奈川県鎌倉市で、この条例をどう活用すべきかなどを考えるシンポジウム「携帯基地局の条例を活用しよう」が7月4日開かれた。会場の、鎌倉商工会議所大ホールの定員約160名が満席になり、関心の高さがうかがわれました。主催は「電磁波を考える会」。
 条例は、携帯電話基地局の設置等の際に、事業者があらかじめ市へ計画を提出し、近隣住民への説明を行うことなどを義務付けています。このような条例は全国で2例目(1例目は福岡県篠栗町)で、東日本および市では鎌倉市が初めて。
 シンポジウムでは、沖縄県の新城哲治医師らが、自宅マンションへの携帯電話基地局設置後に、自分を含め大勢のマンション住民にさまざまな症状が出て、撤去後にその大部分が消失したという、当連絡会が4月に開いた院内集会と同様の報告をした。
 次に、環境ジャーナリストの加藤やすこさんが、電磁波過敏症について海外での対応や、国内の発症者を対象に行ったアンケート調査について、やはり院内集会とほぼ同様の報告をした。
 市民科学研究室代表の上田昌文さんは、携帯基地局問題の解決のために、科学的および社会的にどのような課題に取り組むべきかについて話した。

鎌倉市条例の意図
 続いて、鎌倉市条例の本題に。一昨年9月に市議会に条例制定を陳情した「携帯基地局の電磁波を考える鎌倉の会」事務局の保坂令子さんは「予防原則に立った施策」と「住民が安心して暮らせる環境を作るために自治体ができることをすること」を求めて陳情したと説明。しかし、国の基準が不十分であることを前面に出して事業者に規制をかける条例の制定は現実には難しいことから、「地域における紛争の未然回避」を着地点として条例化にこぎつけたと報告した。

鎌倉市条例の優れている点
 そして保坂さんは、鎌倉市条例で特に評価できると考えている点として、次を挙げた。
(1)対象とする基地局の高さの規定がない=小規模な基地局も対象に含まれる
(2)事業者に設置計画の周知と紛争の防止の責務を課した範囲に「地縁団体」(自治体・町内会等)を含めた=基地局の高さの2倍以内の土地または建築物の所有者等(いわゆる「近隣住民」)に限定されず、しかも対象が明確である
(3)子どもへの特別の配慮=「近隣住民に学校、児童福祉施設その他の施設で規則で定めるものの土地所有者等が含まれるときは、当該施設の管理者の意向を尊重するよう努めなければならない」(条4条2項)

条例等の問題点
 逆に、鎌倉市条例の問題点として、以下を挙げた。
(1)地縁団体への周知について「地縁団体を代表する者」への説明(条7条1項)と規定され、説明会については「地縁団体から説明会の開催を求められたとき」に開催する(規5条2項)とされているため、代表者の対応次第では、地縁団体全員に周知されず、説明会も開かれない等の恐れがある
(2)5月上旬に公表された「鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例第2条第1項及び第8条に関する取扱い基準」第2項は、基地局の設置場所について「鎌倉市」より詳しい町名等は非公開と規定。これは採択された陳情にあった「市民の情報アクセス」という趣旨に反する
 これらの課題をクリアすること、すなわち、自治会・町内会会長のところに情報が留まらないよう制度運用の改善や、取扱い基準の改正、そして、鎌倉市条例を市の内外へ知らせて電磁波問題への関心を高めることが、条例を活かす道であると訴えた。

1件は住民合意ないまま建設
 石川寿美・鎌倉市議は、条例施行後の4~6月で事業者から8件の基地局設置の届出があり、3件で説明会が開かれ、うち2件は話し合い中で、1件は建設されたと報告。建設された1件は、自体会内での意思決定手続きがうまくいかず、反対の住民がいるのに自治会が同意した形になってしまったとして、「この条例は市民の側に責任を課した条例とも言え、市民が確かな判断をするための電磁波についてのしっかりとした情報を得られるようにすることが課題」と指摘した。

条例の波及を
 また、「鎌倉の電磁波汚染の改善を目指す会」代表の戸谷真理子さんは、鎌倉市条例の制定後、県内外の他自治体へその影響が波及している事例を紹介した。
 この日は、基地局問題に悩み取り組む方々が鎌倉市外からも参加した。
 電磁波過敏症のため長野県伊那市の携帯電話圏外の山間地へ避難したAさん(中学2年)ら一家の、通学路近くに基地局が建設されることになり、Aさんは署名運動などに取り組んだことなどを報告した。また、「中継塔問題を考える九州ネットワーク」事務局長の宮嵜周さんもこれまでの活動について報告。宮崎県延岡市の携帯電話基地局周辺で大勢の住民に健康問題が起こり基地局撤去を求める訴訟を起こした原告団長の岡田澄太さんも参加者に紹介された。 (網代)


2010年6月4日

事業仕分け、総務省の研究は「廃止を含めた全面的見直し」
 民主党を中心とした現政権の目玉施策である「行政事業レビュー」、いわゆる事業仕分けにおいて、6月4日、総務省による「電波の安全性に関する調査等」について審議された結果、「廃止を含めた全面的な見直し」との評決となった。
 その理由として、「今の時点で安全性のバッファーは極めて大きく、基準作りに意義のある調査が行われているかどうか不明」という、電磁波問題への無理解から出された評価もある(総務省側の説明だけによって理解することは難しいので、その方の責任とは言い切れないが)。その一方で、「ゼロベースで目的、手法、期間、到達目標を明確にして事業を見直す必要がある」「電波利用料財源の一部を『枠』として扱い、配分している」といった評価は、当を得ていると言える。
 事業仕分けにあたって「行政事業レビューシート」がまとめられ、同事業へのお金の使われ方が分かりやすくまとめられている。これによると、平成19~21年度だけで、毎年11~13億円もの公金が同事業に使われた。
 「廃止を含めた全面的見直し」の結論にもかかわらず、総務省は同事業について予算額を25%減らしただけの9億円を新年度予算に要求しており、他の事業と同様、事業仕分け結果が実際の政策にきちんと反映されるかは疑問だが、問題が多い同事業に初めてメスが入ったことは一応の意義があると言える。
(参考)行政事業レビューのウェブサイト
仕分けの模様は政府インターネットテレビ


2010年4月1日

神奈川県鎌倉市、携帯電話中継基地局のトラブル予防を目的に条例
 4月1日、「鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例」が施行された。携帯電話の中継基地局の設置をめぐり、健康被害への不安などから住民との間で起きるトラブルの未然防止を目的に、設置事業者に事前説明を義務付けた。同様の条例は、福岡県篠栗町に次いで2例目。
鎌倉市のウェブサイト


2010年2月26日

住民が被害を訴えた携帯電話基地局が撤去
 屋上に携帯電話基地局が設置されていた那覇市のマンションの管理組合が「住民に電磁波による健康被害が出ている」と訴え、屋上の賃貸借契約解除を携帯電話会社に通達、会社側が契約期限より9カ月前に基地局を撤去していたことが分かった。 「中継塔問題を考える九州ネットワーク」(熊本市)などによると、住民が健康被害を訴え、会社側が稼働中の基地局を撤去した例は全国的にも少ないという。
 携帯電話会社は琉球新報の取材に「契約満了期限も間近に迫っていたことから申し出を受諾し、賃貸借契約の終了に至った。携帯電話基地局と健康被害との因果関係はないものと考えております」と答えた。
 同マンション屋上にあった基地局は周波数800メガヘルツ帯3基、2ギガヘルツ帯3基の計6基。800メガヘルツは2000年8月、2ギガヘルツは08年3月に設置された。08年春ごろから複数の住人が「大量の鼻血が出るようになった」「眠れない」などと訴え、携帯電話会社はマンション内の複数カ所で電磁波を測定。国の電波防護指針の範囲内だった。(琉球新報2010年2月26日


2009年12月27日

奈良県斑鳩町議会が「携帯電話基地局の電磁波対策を求める意見書」を採択
 奈良県斑鳩町議会は12月定例議会で、「携帯電話基地局の電磁波対策を求める意見書」を全会一致で採択し、意見書を政府へ提出する。意見書は、(1)基地局設置は、周辺住民への説明と合意を義務づけること(2)電磁波強度の規制を強化すること(3)電磁波による健康被害について全国的な疫学調査を実施すること-を求めている。
 同町では2007年11月に「龍田三の一自治会」の住宅地に携帯電話基地局が設置され、8カ月後から周辺住民に耳鳴り、めまい、頭痛などの症状が出始め、10人以上が健康に対する不安を訴えた。
いかるが議会だより2010年2月1日(3頁に意見書全文、9頁に関連記事)
飯高昭二斑鳩町議のウェブサイト


2009年12月20日

「携帯電話には脳腫瘍を引き起こす可能性」 警告ラベル義務付け、米メイン州で提案
 米メイン州の議員が、「携帯電話には脳腫瘍を引き起こす可能性がある」と警告するラベルを携帯電話に付けさせようとしている。同州のアンドレア・ボーランド議員は、携帯電話メーカーに対し、携帯電話の本体とパッケージに脳腫瘍リスクについて警告するラベルをはることを義務付ける法案を提出した。警告文には、携帯電話を体から離して使うように勧める文章も盛り込むという。この法案は2010年に州議会で審議される。(Maine to Consider Cell Phone Cancer Warning (AP)


2009年12月19日

イタリアの裁判所が「携帯電話で脳腫瘍」を認める判決
 イタリアの労働裁判所は、ブレスシアにある会社で管理職を10年間務めた男性のにできた三叉神経の良性腫瘍が職業的原因であることを初めて認めた。彼は仕事で携帯電話とコードレスフォンを長時間使っていた。(EMFacts


2009年12月16日

「携帯電話で基地局で健康被害」 宮崎県延岡市の住民が操業停止求め提訴
 2006年10月にアパート屋上に設置されたKDDIの携帯電話基地局からの電磁波で、耳鳴りや肩凝り、鼻血などの健康被害を受けたとして、宮崎県延岡市大貫町の住民30人が16日、同社に基地局の操業差し止めを求め、宮崎地裁延岡支部に提訴した。住民側が07年10月に半径300メートル以内の全143戸にアンケートした結果(104戸回答)、42戸計63人が何らかの体調不良を訴えたという。
 原告弁護士によると、電磁波による将来の健康被害を予測して操業差し止めを求める訴訟は九州でも数件あるが、「現在被害を受けている住民が訴えるのは全国でも異例ではないか」という。(西日本新聞12月17日)


2010年10月13日new

福岡市前原市長、高圧送電線設置計画の見直しを九州電力へ申し入れ
 松本嶺男・前原市長は、九州電力による同市雷山などでの高圧送電線設置計画について再検討するよう、眞部利應・同社社長あてに文書で13日に申し入れた。9月の市長選で同計画が争点となり、来年1月発足する「糸島市」の市長選でも争点化が必至のため、異例の申し入れになったとみられる。

 申し入れ書は▽平野部分の送電線の地下埋設▽変電所を農産物等直売施設に隣接させない▽事故や健康被害の発生には九電が一切の責任を負う▽環境影響評価(自主アセスメント)を実施し結果を公表する--などを求めている。

 九電は15年6月の運用開始を目指しているが、地下埋設にすると地上の5~10倍のコストがかかるという。

 計画には地元住民が作る「雷山の美田と生活環境を守る会」が、豊かな景観を損なう▽超低周波電磁波の人体への悪影響が危惧される--などとして反対運動を続けている。

 受け取った九電の荒巻康博福岡支店長は「検討する時間はかかると思う。地元に理解を求める活動は続ける。市当局のご支援をお願いしたい」と応じた。(毎日新聞福岡都市圏版10月14日)



2010年10月8日new

フランス、小中学校での携帯電話禁止
  フランス上院議会で8日、小中学生が学校で携帯電話を使うのを禁じる条項を盛り込んだ環境法案が賛成多数で可決された。近く下院で審議し、成立する見通し。「携帯の電磁波から子どもの健康を守る」のが法案の主目的。14歳以下を対象にした携帯電話の宣伝や、6歳以下の幼児でも使えるように操作手順を簡略化した製品の開発も禁じる。(東京新聞10月12日)


2010年7月14日new

都立高屋上の携帯電話中継基地局設置計画、保護者らの反対で中止
 東京都教育委員会が、都立豊多摩高校(杉並区)の校舎屋上に、NTTドコモの携帯電話中継基地局設置を都立校で初めて許可をしたが、保護者や地域住民らが「電磁波が不安」などとして反対したことを受けて、NTTドコモが14日に設置中止を都教委へ連絡した。(東京新聞7月17日)


2009年7月13日

総務省「第3回生体電磁環境に関する検討会」
 総務省の「生体電磁環境に関する検討会」の第3回が7月13日に開かれ、これを傍聴してきました。同検討会は「電波による人体への影響に関する研究を促進する」ことなどが目的だとしていますが、実質的には「電磁波は危険ではない」という国の見解にお墨付きを与えるための機関です。とは言え、新しい情報が得られるなど、傍聴する意義もあります。

「インターフォン研究」結果まもなく公表か
 携帯電話使用と、頭や首のがん・腫瘍との関係を調べるために、世界保健機関の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が中心になって「インターフォン研究」が行われました。世界13カ国による大規模な疫学調査です。すでに終了していますが、国ごとの結果などが発表されているだけで、全体の発表が遅れていました。
 このインターフォン研究の「論文の第1報(神経膠腫と髄膜腫について)が現在、科学ジャーナル(学術論文誌)で査読中であり、近く(早ければ8月中にも)掲載される予定であることが、5月28日にIARCのホームページに掲載された」と、この第3回検討会で報告されました。第3報まで続くとのことです。「査読」とは、論文をジャーナルに掲載して良いかなどを審査することです。
 これまで公表された国ごとの結果などのうち、一部は「携帯電話を10年以上使用すると、通話の時に携帯電話機をあてる側(右にあてる人なら右側)の脳腫瘍の発症リスクが、統計学的有意に高まる」ことを示しました(デンマーク、英国など5カ国のプール分析で神経膠腫が1.4倍、スウェーデンの研究で聴神経鞘腫が3.9倍)。このため、世界中が同研究に注目しています。

座長が“意味深”発言
 このインターフォン研究の結果が、早ければ8月中にジャーナル掲載という形で公表されることについて、検討会座長の大久保千代次委員(以下、当研究会事務局長・大久保貞利との混同を避けるため「千代次氏」と呼びます)が次のように発言しました。「このインターフォン研究の論文が掲載された際には、いろいろな意味でインパクトが大きいことが想定されます。その対応が必要な場合には、当検討会としてひとまずの対応は私にお任せいただきたいと思います」。これに対して他の委員や事務局からの発言はありませんでした。
 千代次氏はこれまで、いくつかの国の委員などを歴任して、電磁波は安全であると宣伝し、電磁波過敏症は「電磁波への恐怖によって発症する」と決めつけている方です。「インパクトが大きい」場合の千代次氏による「対応」とは、すなわち、「掲載された論文が、既に伝えられている通りリスク増加の可能性を示す内容であった場合、そのリスクを過小評価するようなコメントを、総務省検討会の立場でマスメディア等を通して発信する」ことではないかと、筆者は推測しました。
 この推測が当たっているかどうかは別として、論文掲載の際には、すかさず市民の側から正確な
情報を発信することが必要だと感じました。

WHOなどの今後のスケジュール
 WHOおよびICNIRPの今後の想定されるスケジュールが、千代次氏より以下の通り報告されました。
  • 2009年末 超低周波電磁波について2007年にWHOが出したEHCを受けて、ICNIRPが新たなガイドラインを勧告
  • 2011年2月 ICNIRPが高周波電磁波の発がん性評価のタスク会議を開催、2011年内に評価を発表
  • 2013年 高周波電磁波のEHC策定
 多氣昌生委員(首都大学東京)からは、ICNIRPによる高周波ガイドライン見直しまでまだ時間がかかるため、中間声明が行われる予定であると報告されました(時期は示されず)。

研究テーマ、市民から15件の応募 委員らが実施に否定的なコメント
 総務省は、今後国が行うべき研究について、市民に意見を求めました。これに対し、以下の通り計15件の提案があったことが、第3回検討会で報告されました。
  • 電磁波過敏症について=4件
  • 携帯電話中継基地局やテレビラジオ放送塔周辺の疫学検査・インターフォン研究の追跡調査など疫学調査=8件
  • 電車内など閉鎖空間で反射し強まる電波による影響についての調査=2件
  • 生活環境中の電波発生源の調査=1件
 座長の千代次氏は「これらの提案については、すでにWHOから見解が出されていたり、関連研究がなされているものがあるので、資料を添付しました」旨述べ、添付資料を提出した各委員・事務局から説明がありました。これらの説明は総じて、市民から提出された研究課題に取り組むことに否定的または消極的な評価を与えるものでした。
 たとえば、山口直人委員(東京女子医科大学)は、市民から提案があった、携帯電話基地局と電磁波過敏症(不定愁訴)の関連を調べる疫学調査について、以下のようにコメントしました。
  • 地域内の居住者で条件に当てはまる者は全員調査を行うことが不可欠だが、それは不可能。
  • 調査目的を知らせないことが不可欠だが、知らせなければ参加率が下がり、知らせれば偏った集団になる可能性が高い。
  • 曝露評価は実際の測定が不可欠だが、個人曝露測定は実質的に不可能。基地局からの距離が曝露評価の代理指標にならないことは明らか。
  • 以上から、このテーマの研究を実施したとしても、有意義な疫学データは得られない。
 この山口委員のコメントの妥当性について、私たちはしっかりと検証したいところです。
 各委員などから以上のような説明があった後、千代次氏が「電磁過敏症については、関心が高いことから、リスクコミュニケーションの意味からも再検討したい」旨、発言しました。

結局採用はゼロ?
 結局、市民の提案を採用するのかしないのか、筆者には理解できなかったので、検討会の終了後に、事務局である総務省の担当者に話を聞いたところ、概ね以下のような回答でした。
  • 電磁波過敏症については、研究テーマとするのではなく、検討会委員とは異なる立場の人にも入ってもらって別枠で取り組む。(→つまり、懇談会のようなものを設ける?)
  • 疫学調査については考慮する。インターフォンの追跡調査は、すでに取り組んでいる。(→つまりは、提案は採用しないということ?)
  • 閉鎖空間の電磁波については、今後新たな研究が発表されたら委員に報告させる。
  • 生活環境中の電磁波発生源については、総務省が既に行った測定結果について広報する。
 募集前からの予想通り、提案の採用は限りなくゼロに近そうであるという印象でした。
 ただ、電磁波過敏症については、検討会メンバーでない立場の人も交えてのリスク・コミュニケーションの場を設けることを検討しているようにも受けとめられたので、それを本当にきちんとやるのであれば、意味はあるとは思います。(網代)


2009年6月4日

WHO国際電磁界プロジェクト元責任者が「EHCとファクトシートの優先度は同等」
経産省WGの不当性が一層明らかに
 6月4日、WHO国際電磁界プロジェクトの元責任者であるマイク・レパチョリ(マイケル・レパコリ)氏の講演会が都内で開かれました(電磁界情報センター主催)。講演後の質疑応答でレパチョリ氏は筆者の質問に答え、WHOが出した環境保健基準(EHC)とファクトシートについて、「ぜひとも政策制定の担当の方々には2つの文書の両方とも目を通していただきたいと思いますし、優先ということに関してはこの2つの文書は同等の優先度を持っています」(同センターによる記録)と述べました。ファクトシートのみを優先させ、EHCに盛り込まれていた予防的(precautionary)方策などを消極的に評価した経産省のワーキンググループ(WG)の不当性が一層明らかになったと言えます。
 2007年6月にWHOが公表した超低周波電磁波のEHCは、急性的な健康影響を引き起こさない程度の超低周波磁界(0.3~0.4μTを上回る)への長期的曝露と小児白血病のリスク増加について、「因果関係ありとするには充分強固ではないものの、懸念を抱き続けるには充分強固である」(1.1.11 健康リスク評価)と評価。「防護手段」として「予防的方策を採用することが必要」であり、「電力による健康上、社会的、経済的利益(略)が損なわれないという前提で、曝露を低減するために予防的手続きを実行することは合理的であり正当化される」(1.1.12 防護手段)と明記しました。
 しかし、EHC公表に合わせて設置されたWGでは、座長の大久保千代次氏が「(EHCは)WHOの見解と完全に一致しないこともあり」「一致しない部分はWHOの見解としてファクトシートを示す」と説明。EHCと同じ日にWHOが公開したファクトシートは曝露低減について消極的に記載しており「ファクトシートの中では予防的(precaution)という言葉を一切取ってあります。要するに、WHOは予防ということについては消極的であるということです」などと決めつけました(ワーキンググループ(第2回)議事録)。
 このように、EHCとファクトシートの違いをことさらに取り上げ、相違点についてはファクトシートのほうを優先させるという考え方に基づいてまとめられたWGの報告書には、急性影響は引き起こさない程度の電磁波の長期的曝露から私たちの健康を守るための防護策が、記載されませんでした。
 レパチョリ氏は、WHOを辞めた後に電力会社のコンサルタントに就くなど、公平性について疑問を持たれている方です(電磁波問題市民研究会会報)。この日のレパチョリ氏の講演も、首を傾げる内容が随所にありました。そのようなレパチョリ氏であっても、EHCの優先度はファクトシートと同等であると述べたのです。
 レパチョリ氏は当然のことを述べただけであり、WHOの電磁界プロジェクトが10年以上かけてまとめたEHCよりファクトシートが優先するという話は、WGや電磁界情報センター以外からは聞いたことがありません。(網代)


2009年4月1日

欧州議会が電磁波規制の強化を求める決議
 欧州議会は4月1日、欧州委員会が1999年に示した電磁波規制についての勧告を見直すことなどを求める報告書を賛成559、反対22、棄権8で採択した。この決議は拘束力はないが、EU加盟各国から直接選挙で選ばれた議員が構成する欧州議会の大多数が賛成した意味は重い。
 フレデリック・リエス(ベルギー)が起草した同報告書は、無線技術などの利用による社会への便益を認つつ、健康リスクがある可能性が不確実であり続けていることへの懸念を表明し、より厳格な規制と住民保護などを求めている。
 欧州理事会は1999年の「勧告1999/519/EC」で、EU各国に対し、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が19 98年に示した指針値と同等か、それを超えない規制を行うよう勧告した。しかし、この指針値は短期的曝露による急性影響しか考慮せず、長期的曝露による影響を考慮していないことなどから、より厳しい対策を取っている加盟国も多い。同報告書はこのことも根拠の一つとして、1999/519/ECに示されている電磁界制限の科学的根拠と適切性を見直し、議会にその結果を報告するよう求めている。
 同報告書はこのほか、以下などを求めている。
  • 携帯電話基地局など、電磁波発信施設は、学校や保健施設などから一定の距離をおいた場所に設置されること
  • アンテナ、携帯電話基地局、高圧送電線の設置は、健康リスクと訴訟を最小にするため、産業側関係者、行政当局、住民団体の間で協議すること
  • 電磁波発信施設の曝露地域を示す地図をインターネットで利用できるようにするなど、市民が信頼できる情報にアクセスできるようにすること
  • 携帯電話と脳腫瘍の関係などを調査している国際共同疫学研究(インターフォン研究)の結果の公表が繰り返し延期されている。同研究のコーディネーターであるエリザベス・カーディスによる「子どもたちに関し携帯電話は合理的な制限を超えて使用されるべきではない」とする「警告のためのアピール」によって、欧州議会は特に懸念している。同研究に財政的寄与をしている欧州委員会は、結論が発表されない理由を責任者に問うべき
  • 特に脳がまだ発達中の子どもや若者に携帯電話のリスクがある可能性についてまだ不確実なため、携帯電話の危険性について意識を高めるとともに、ハンドフリーキットを使用し、通話時間を短くし、電源を切るなどの上手な使い方を促進するため、電磁波研究に向けられているEUの資金の一部を意識向上キャンペーンに切り替えること
  • 基準値の設定に関して世界保健機関(WHO)とICNIRPはより透明性を高め、利害関係者との対話を受け入れること
  • スウェーデンの例にならって、電磁波過敏症に苦しむ人々に適切な防護と機会均等を与えるために障害者として認知すること
欧州議会の採択文
和訳(VOC-電磁波対策研究会のサイト
和訳(植田武智さんのサイト


2009年2月7日

「リニア新幹線」で学習会
 JR東海が検討しているリニア中央新幹線計画をめぐり、沿線5都県の住民が7日、山梨県甲州市内に集まり、必要性や課題を考える学習会を開いた。「財政、自然環境の破壊、電磁波などの問題を一緒に考えていく必要がある」とし、今後、5都県の住民によるネットワークを発足させ、多くの住民にリニア問題に関する情報を提供していくことで一致した。学習会は、川村晃生慶大教授(甲府市)が代表を務める山梨県内の団体が呼びかけ、長野県民約10人を含む30人余が出席した。(信濃毎日新聞)


2009年2月4日

フランスの高等裁判所が携帯電話基地局撤去を命じる判決
 ローヌ県タサン・ラ・ドゥミリューヌ町の住宅地に2006年に建てられたブイグ・テレコム社の携帯電話基地局(高さ19m)の近隣に住む3組の夫婦が、健康上のリスクに曝された賠償や基地局の撤去などを求めて提訴。ナンテール大審裁判所は2008年9月18日、「この問題に関して権限を有する国内外の当局が、予防原則の適用を推奨していることに争いはない」として、各夫妻へ3000ユーロの支払いと、基地局の撤去などを命じた。ブイグ・テレコム社は控訴したが、ベルサイユ高等裁判所は2009年2月4日、各夫妻へ7000ユーロの支払と、基地局の撤去などを命じた。(出典


2008年12月12日(開催日)

「電磁界情報センター」のシンポジウムに市民団体から参加
 経済産業省の「電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ」報告書を受けて、「電磁界情報センター」が、このほど設立された。「リスクコミュニケーションの増進を目的とした中立的な常設機関」と自称しているが、その構成を見れば電磁波関係の市民団体が関与していないなど、「中立」とはほど遠い。
 しかしながら、12月12日に同センターが開くシンポジウムには、市民団体「電磁波問題市民研究会」の大久保貞利事務局長(当連絡会議の共同代表世話人の一人)が参加することになった。国または国が関与した電磁波関係の催し等では市民団体が徹底的に無視されてきたこれまでの経緯を考えれば、これはこれで画期的なことであると言える。シンポジウムの参加申込はこちらから。


2008年10月7日

九州電力の変電所建設計画、住民が反対する会を組織
 九州電力が前原市で進める伊都変電所建設計画をめぐり、送電線ルートが予定される沿線住民が、電磁波による健康不安から、計画撤回を求める「雷山の美田と生活環境を守る会」(楢崎清和会長)を今年9月、結成した。電磁波による小児白血病の不安を訴えるほか、(1)鉄塔林立で田園景観が損なわれる(2)地震や強風で鉄塔が倒れる懸念がある-などと指摘する。九州電力は「小児白血病と電磁波の因果関係は科学的に明確でない」と主張。景観に配慮したり、鉄塔の強度確保をしたりして理解を求める考えだ。(西日本新聞)


2008年9月4日

欧州議会が各国の電磁波の制限値をより厳しくすることを求める
欧州議会ニュースリリース

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