2004/12/21

REFLEX 最終報告書

情報源 FINAL REPORT
Risk Evaluation of Potential Environmental Hazards From Low Energy Electromagnetic Field Exposure Using Sensitive in vitro Methods  ~54頁 /  55~106頁 / 107~182頁 / 183頁~
翻訳 細田 茂夫

(表紙)


最終報告
高感度生体外手法を用いた低エネルギー電磁場暴露による潜在的環境要因のリスク評価

生活資源の管理と生活の質計画によるEUからの資金提供プロジェクト
重要行動4 "環境と健康"
契約 ; QLK4-CT-1999-01574
開始日 2000年2月1日
終了日 2004年3月31日
頭文字(省略形) REFLEX


(216頁~)

4.0 議論

4.2 RF-EMF 曝露後に得た結果

4.2.4 遺伝子及びタンパクの発現

4.2.4.8 概要(参加者1)

 試験管細胞培養と動物モデルを用いたRF-EMF暴露による遺伝子とタンパク質の発現にかかる科学実験は、未だ初期段階にあり、既に発表されたものに関しては、解釈が困難である(Independent Expert Group on Mobile Phone 2000)。Reflex のデータによれば、RF-EMFは様々な細胞システムにおいて遺伝子とたんぱく質の発現に影響するかもしれないという結論を導くことが出来る。SAR値1.5W/kgのRF-EMF曝露は、p21及びc-myc遺伝子の一時的上方調節と、p53不完全胚幹細胞内におけるhsp70遺伝子の長期的上方調節を引き起こす(3.2.4.1. 4.2.4.1)。 SAR値2W/kgのRF-EMF曝露は、タンパク転写に影響を与えることなく明白にラットの神経幹細胞とヒト神経芽腫細胞(NB69)における線維芽細胞成長因子(FGF)のFGFR-1レセプター発現を減少させる。(3.2.4.2. 4.2.4.2) RF-EMF曝露は、ヒト由来の内皮細胞(900 MHz, 2.0 W/kg)とHL-60細胞(1800 MHz, 1.3 W/kg)において様々な細胞及び遺伝子の発現を上方若しくは下方調節した(3.2.4.3, 3.2.4.6, 3.2.4.7, 4.2.4.3, 4.2.4.6, 4.2.4.7,)。SAR値2.0W/kgのRF-EMF曝露は、信号変換経路に影響がある可能性のある内皮細胞におけるタンパク質リン酸化の全体的なパターン変化とp38MAPK/hsp27ストレス反応経路活性化があった(3.2.4.6, 4.2.4.6)。

 予期しないということではなかったが、入手可能な文献については意見が分かれる(Stewart Report 2000)。Lee at el(2004)は2450MhzのRF-EMF曝露後にHL-60細胞の遺伝子発現の変化を観察し,Zeng et al(2004a)は1800MhzのRF-EMF曝露後にヒトの乳癌細胞(MCF-57)のタンパク発現変化を観察したが、ヒトのグリオーマ細胞(MO54)におけるhsp70とhsp27の発現におけるRF-EMF(1950Mhz)の影響について調べたMiyakoshi et al(2004)はそのようなことを観察しなかった。参加者6(3.2.4.6, 4.2.4.6)の所見とは反対に、やや異なる手法(3.2.4.5, 4.2.3.5)を用いた参加者9による観察では内皮細胞におけるhsp27の発現に有意な増加はなかった。ある実験室ではhsp27の発現は有意に増加し、この増加は別の実験室では有意に近い増加であったことから、この不一致は無視できるようである。更に、SAR値1.4W/KgのRF-EMF曝露(1800 MHz)はヒトのリンパ球の遺伝子発現には影響せず(3.2.4.4, 4.2.4.4)、SAR値2W/kgのRFーEMF(900 MHz)への曝露後においてマイクロアレイシステムで実験した数千のうち数個の遺伝子しか変化していないことが2個のヒト免疫細胞株で観察された(3.2.4.5, 4.2.4.5)。最後にRF-EMF曝露は、神経細胞の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現と活性には影響しない(3.2.4.5, 4.2.4.5)。

 ゲノミクス及びプロテオミクス手法での実験の結果は、使用するEMF信号と調査する細胞システムに、本質的に依存しているのかもしれない。勿論、これらの遺伝子とタンパク発現の変化が通常の生理学の範囲内であるのかどうかという疑問はあるし、もしもそうであった場合は、それらの変化はなんらかの生物学的関連性を持っていない。


5.0 結論

5.1 ELF-EMF研究により得られた知見に基づく結論

5.1.1 ヒト繊維芽細胞,ヒトリンパ球、ヒト単球、ヒト筋細胞、ラットのgrauulosa細胞(参加者3)

 これらは、参加者3が彼らの知見から導き出した結論である。

  1. 細胞分裂での相当な染色体損傷を起こすかもしれない、間欠性電磁場の潜在的染色体異常誘発を、データは強く示唆している。しかし、安定した転移の形態においては持続しない。
  2. 誘発されたDNA損傷は、熱効果によるものではなく、ELF-EMF曝露の環境安全基準について検討を引き起こす
  3. 影響は年配者の提供による細胞においてより明確であった。これはELF-EMFによるDNA鎖切断について、年齢に関連したDNAの修復効率低下を示している可能性がある。
  4. それに加えて、3つの反応する細胞と3つの反応しない細胞を特定できた可能性があり、これはこれまでの文献によるELF-EMFの反応についての異なる結果を部分的に説明できる可能性がある。
  5. 遺伝子的DNA修復障害である毛細血管拡張性運動失調症を持つ者から提供された繊維芽細胞は、ELF-EMFで誘発したDNA切断の増加率が2倍以上であった。
  6. 3Hzから550Hzの間で最大のDNA切断効果が観察されたのが、16.66Hzと50Hzであり、欧州で最も普通に使用されている交流電流である。
  7. これらをまとめると、結果が示していることは、EMF曝露の観察された影響は間接的なメカニズムによって引き起こされており、ミトコンドリア膜電位の変化によるものではない。
5.1.2 ヒト神経芽細胞株NB69とヒト肝細胞癌細胞株hepG2(参加者5)

 10若しくは100μT(3時間曝露/3時間休止 曝露サイクル)の正弦波MF、50Hzへの42時間又は63時間の曝露がNB69ヒト神経芽細胞の細胞成長に変化を引き起こすことについての予備観察を、我々の現在の結果は確認した。データが示しているのは、BrdU混入とフローサイトメトリーにより示された細胞増殖がこのような効果を及ぼしたことである。

  1. 対照的に、50Hz MF 2000μT磁束密度、5分曝露させて/30分休む曝露サイクルでは、NB69株の細胞成長に有意に影響を与えなかった。従って、分化神経胚幹細胞に影響があったと報告されていた(参加者4)。これらの曝露パラメーターに、我々の細胞は反応的ではなかった。5分曝露させて30分休む曝露サイクルで100μTへNB69株を曝露させる追加実験は、有意な結果を示さなかった。このことが示すのは、検知可能な細胞反応を発生させることにおいて、曝露サイクルは決定的であるということである。
  2. NB69株において、PCNA標識の結果が示すのは、培養後6日目に50Hz 100-μT電磁場へ曝露した標本中のPCNA陽性細胞の割合が、対照群と比較して有意に増加した。
  3. 我々は、異なるヒト癌株、HepG2ヒト肝細胞癌細胞株(データは表示せず)の反応も調査して、NB69株とは異なる成長パターンを得た。10又は100μTでの50Hz磁場で両方の株において培養後5日目に細胞数において有意の増加のある、似た反応が引き起こされた。HepG2について、メラトニン、10nM濃度において、電磁場により誘発された成長促進効果を抑制した(Cid et al 11 International Congress of IRPA, 2004)。HepG2株において、曝露を培養後7日まで維持すると成長効果はより強くなったが、NB69株では同様の曝露期間延長は効果が減少する結果となった。双方の株の異なる反応は、統制された条件でNB69培地が培養後7日で飽和し、結果としてあらゆる刺激に対する反応能力がひどく損なわれたという事実による可能性がある。
  4. 50Hz正弦波MF 100μT(3時間曝露/3時間休止 曝露サイクル)は、ヒト神経芽腫細胞株のNB69の自然発生的な細胞死の有意な減少を引き起こした。このデータが示唆するのは、それぞれの反応は細胞周期の調節についての電磁場の影響であるということである。
  5. NB69細胞において、50Hz正弦波MF100μT(3時間曝露/3時間休止 曝露サイクル)は、時間に依存する形態で、リン酸化環状アデノシン一リン酸塩応答要素結合タンパク質(p-CREB)の活性を変化させた。この結果が示唆するのは、p-CREBの活性に細胞の 成長/アポトーシス についての上記で説明したこの電磁場の影響が関与していることである。
5.1.3 ヒトリンパ球(参加者8)

 全体的には、得られたデータが示すのは、ELF-EMF曝露へのヒトPBMCsの無反応である。よって結論は、ELF-EMFは増殖と細胞活性、リンパ機能の2つの基本的段階に影響しない。以前の研究は、パルス化されたELF-EMFはヒトリンパ球機能に干渉するかもしれないと示唆していたからである(Cossrizza et al. 1989a/b 1991, 1993 )。将来の実験が、AC.50Hz ELF-EMF により得られた否定的結果に対する生体システムにおけるパルス化信号の役割を調査できると述べることが出来る。


5.1.4 マウス胚幹細胞(参加者4)
  1. 高密度のELF-EMF信号は、腫瘍抑制因子p53に不足したES細胞の制御遺伝子egr-21とc-junの転写量を一時的に増加させることができる。
  2. ELF-EMF信号の間欠性の設定は、いくつかの制御遺伝子の転写量において決定的役割を果たしているかもしれない。
  3. p53の欠損により規定される多能性ES細胞の遺伝子構成は、ELF-EMFに関連した細胞反応に影響を与えるが、その一方で野生型細胞は反応しない。ELF-EMFに誘発された制御遺伝子の発現量変化は埋め合わされるのか正常化されるのか、若しくはin vivoでの持続的生物学的効果となるのか、については謎のままである。
  4. ES派生神経前駆細胞のELF-EMF曝露は、DNA損傷誘導的遺伝子GADD45とp53反応性増殖停止とbcl-2家族の遺伝子の転写量に影響を与えるかもしれない。この発見は、少なくとも転写において、プログラム化された細胞死と細胞周期の調節を含む基礎的細胞過程に影響するかもしれないことを示唆するものである。
  5. アルカリ性と中性コメット解析は、ES細胞派生神経前駆細胞のELF-EMF曝露後の単鎖DNA及びDNA2本鎖切断の誘導について明白な影響を証明することには失敗した。
5.1.5 心臓分化の間におけるネズミ胚幹細胞での実験(参加者8)

 ES細胞モデル(GTR1)において、ELF-EMFは、心臓病家系へES細胞を誘導することに密接に関与する遺伝子の発現に一貫した増加を与えた。in vitro流出解析により示されたように、ELF-EMFは、ES細胞の転写装置に影響する。これらの反応はと心臓病の特定の遺伝子発現を導き、最終的に心臓発生の高生産性が続くのは、ELF-EMF曝露細胞での自然発生的な心臓鼓動コロニー数の増加に示されているとおりである。ニューロン仕様のわずかな影響と骨格筋決定を促進する遺伝子の転写に影響することに失敗したEMFは、遺伝子抑制の一般的活性を除外しているようであり、GATA-4,Nkx-2.5、prodynorphin遺伝子発現とMFを組み合わせることは、ES細胞心臓発生に関するメカニズムを代表しているかもしれない。我々の意見では、この研究は、ゲノム及びポストゲノム技術を用いた、特に心臓病への表現型への分化及び、細胞分化を特に伴う遺伝子配列の発現におけるEMFの影響に関する広範囲の調査への第一歩を代表するものである。


5.1.6 神経芽腫細胞株SY5Yでの実験(参加者11)

 結果が明確に証明したのは、議論された曝露条件において、カテコールアミン作動系とコリン作動系の主要要素の発現は、ELF-EMFへの環境的曝露に反応的ではないことである。


5.1.7 アフリカツメガエル卵母細胞、ヒト線維芽細胞、ラット顆粒膜細胞(GFSHR-17細胞株)(参加者7)
  1. 適用した3つの曝露実験計画 50-Hz電力線、1.0mT 若しくは 2.3mT 16時間連続適用; 50-Hz電力線、1.0mT 若しくは 2.3mT 間欠的(on/off;5分/10分)16時間 データが示すのは、発現量と電位依存性のrCx46コネクソン通門は影響を受けない。我々は以前に、プロテインキナーゼC依存性リン酸化反応過程が電位依存性のrCx46コネクソン通門(Ngezahayo et al 1998)に影響を与えることを示すことが出来たので、タンパク質リン酸化へのELF-EMFの有意の相互作用は無視されることがある。2つのrCx46-hemi-channelで構成する細胞間チャネルの形成は、それぞれ、1対の機械的に接触した卵母細胞の間で、ELF-EMF曝露の影響を示した。曝露は実質的に細胞間チャネルの形成を抑制したが、これまでに分析した3つの実験水準では影響は有意ではなかった。既知であるhemi-channelの(Ca2+)依存性通門属性は、ELF-EMF曝露により影響されていないように思える。
  2. 高密度2.3mT 30分 連続的ELF-EMF曝露は、二重全細胞パッチクランプ法調査で、培養した対のラット卵母細胞のギャップ結合連結(細胞間チャネル)に有意に影響していない。
  3. 提供されたデータは、ELF-EMF(50Hz,1mT)への間欠的曝露(5分間曝露/10分間休止)は、卵母細胞や培養した線維芽細胞において[Ca2+]の経時変化に長期の持続的影響を発生することはない。この知見は、5から18時間の曝露とは独立しているように思える。時間依存性の最大約15時間でのDNA鎖切断の 増加/減少 のIvancsits et al(2003b)との一致した観察で、それゆえ[Ca2+]の長期持続的変化での一致に反映されていないようである。このような長期持続的変化は、線維芽細胞のミトコンドリア電位においても見出せないことは、興味深いといえる。ELF-EMF曝露に続くさらなるストレス要因への曝露、例えば200μM H2O2 や 30 mM KClにおいても、[Ca2+]の有意な変化は引き起こされなかった。
  4. 曝露実験は、卵母細胞の容量調節機構に有意の変化を示さない。細胞間の変換経路の更なる研究は、ゲノムレベルのELF-EMFの有意な影響が細胞レベルに反映されるかどうかについての未解決の疑問を理解するために許されるべきである。現在のところ、細胞属性の有意な変化は、分析された細胞属性からは見出せない。
  5. 培養卵母細胞のELF-EMF曝露は、最大約18時間での中性コメット解析による観察では、DNA2本鎖切断の有意な時間依存性増加を示す。この時間依存性は、8Hz,16.66Hz,30Hz,50Hz,300Hzにおいても観察される。それゆえ、選定されたELF-EMF曝露の実験の計画においては、DNA2本鎖切断の観察された増加は、周波数に依存するものではないようだ。しかし、アルカリ性コメット解析の結果は、単鎖DNA切断及びDNA2本鎖切断の合計についてELF-EMF曝露の効果は周波数依存性を示している。50Hz ELF-EMF曝露後、アルカリ性コメット解析により卵母細胞について得られたデータは、参加者3により得られたデータと類似している。
5.1.8 cDNA配列にて分析したヒト細胞の遺伝子発現へのELF-EMFの影響(参加者12)

 ここに提出された遺伝子発現分析によれば、EMFs --- RF-EMF ELF-EMF ---はヒト細胞の遺伝子発現を変化させることは、かなりありそうである。in vivo研究では、健康リスクに関してなんらの結論も得られないが、その結果はEMFsによる細胞の詳細な分子変化を解明する更なる実験の重要な必須条件である。

 最も明白な変化は、エネルギー代謝とリボソーム発生に関与する遺伝子の発現において検知された。影響が細胞増殖の増加のようにより強烈であるか瞬間的かについては、分子解析により更に調べるべきである。同様なのは、EMF曝露後に信号送信がどのように働くかについて、生物学的統計を参照する、最初の考察である;Ca経路(PIP3,PKC,ERK MAP そして他の経路も含まれるかもしれない、しかし我々の研究後においては明確ではない)は、EMF曝露後の制御に関与しているかもしれない。アクチン細胞骨格(例 張線維)とECMがもしかして、下方制御されて、それが細胞の脱分化をもたらすかもしれず、細胞の増殖と成長に重要であることを今一度述べる。アクチン細胞骨格は、異なる細胞(付着細胞、非付着細胞、細胞移動etc)で異なる働きをするので、より特定的な解析により調査すべきである。


5.1.9 要旨(参加者1)

 REFLEX計画により得られたELF-EMFデータは、次の結論を与える。

  1. ELF-EMFは、ヒト線維芽細胞と他の細胞株の初代細胞培養に遺伝毒性影響がある。これらの観察は、REFLEX共同事業体内の2つの研究所(参加者3と参加者7)においてあり、REFLEX計画以外の2つの研究所により確認されている。35μTの低い磁束密度において、有意な水準でDNA鎖切断を発生させる。強い肯定的な相関関係が、ELF-EMFへの曝露の持続期間及び密度と一本鎖DNA及びDNA2本鎖切断の増加と小核頻度の間に観察された。驚いたことにこれらの遺伝毒性影響は、間欠的ELF-EMFに曝露させた時のみに観察され、連続的曝露ではなかった。ELF-EMFへの線維芽細胞反応性は、提供者の年齢と特定の遺伝子修復障害の存在により増加した。影響は、実験された別の種類の細胞の間においても異なった。特に、成人提供者からのリンパ球は、反応しなかった。ヒト線維芽細胞のELF-EMF曝露後には、染色体異常も観察された。
  2. 10及び100μTの磁束密度でのELF-EMFは、神経芽腫細胞の増殖率を増加させ(参加者5)、0.8μTの磁束密度で心筋細胞へのマウス幹細胞分化が増進された。これらの結果と対照的に、プログラム化された細胞死、細胞増殖、細胞分化、細胞周期、DNA合成の明白ではっきりした影響は、研究を行った多くの別の細胞系においてなかった。
  3. 神経芽腫細胞を63時間50若しくは100μTの磁束密度でのELF-EMFへ曝露させた時、増殖率の増加が続いた神経芽腫細胞の自発的アポトーシスをELF-EMFが抑制した(参加者5)。これらの結果とは対照的に、アポトーシス過程への明白ではっきりしたELF-EMFの影響は、研究を行った多くの別の細胞系においてなかった。
  4. 約2μTの磁束密度におけるELF-EMFは、p53欠如のマウス胚幹細胞内の p21,cjun,egr-1 といった初期遺伝子の発現を上方制御する、しかし健康で野生型細胞内ではそうではない(参加者4)、そして、それに加えて、様々な別の種類の細胞系においてタンパクと遺伝子の発現に影響するかもしれない。全ゲノムcDNAマイクロアレイ及びプロテオーム解析の結果が示すのは、EMFは細胞分化、細胞増殖、細胞分裂において役割を果たす遺伝子のいくつかの集団を活性化させるかもしれないということだ。(参加者12)

 これらをまとめると、REFLEX計画の結果はもっぱらin vitro研究で得られており、それゆえ我々は、現行安全基準以下のELF-EMF曝露が人々の健康に危険をもたらすという結論には、適していない。しかし、そのような危険性があるという範囲へより近い仮定へと我々は変わった。更に、動物及びヒトのおけるあらゆる種類の慢性病と機能障害の発達の基礎となり得る病態生理学メカニズムを我々が全く認識していないという主張を誰かがすることについての正当化理由はない。


5.2 RF-EMF研究で得られた知見に基づく結論

5.2.1 ヒト骨髄球細胞株HL-60 (参加者2)
  1. HL60細胞での小核誘導とコメット形成への影響に関して異なるSAR水準で調査した。SAR水準 0.2 W/kg から 3.0 W/kg の 比較RF-EMF曝露(1800MHz,連続波,24時間)は、両方の影響はエネルギー依存性であるような示唆であった。SAR 0.2 W/kg と 1.0 W/kg 両方において、コメット形成と小核頻度は、シャム曝露対照細胞での観察との有意な違いはない、コメット形成と小核頻度は、SAR 1.3 W/kg と 1.6 W/kg と 2.0 W/kg において有意に増加した。最大の影響は、SAR 1.3 W/kg で観察された。より高い SAR水準 2.0 W/kg から SAR 3.0 W/kg において、コメット形成と小核頻度はSAR 1.3 W/kgにて述べた影響に比べて少ない発現となった。
  2. 評価の統計的基礎を拡大するため、異なる実験グループにおける小核の平均数(1000BNC当たりの小核)を (ⅰ)全てのSAR実験(0.2 W/kg, 1.0 W/kg , 1.3 W/kg , 1.6 W/kg , 2.0 W/kg , 3.0 W/kg , (ⅱ)高いSAR(1.0 W/kg , 1.3 W/kg , 1.6 W/kg , 2.0 W/kg , 3.0 W/kg) 又は (ⅲ)0.2 W/kg 又は 1.0 W/kg の低いSAR にて比較する曝露細胞を計算した。(ⅰ)及び(ⅱ)両方の集団では、シャム曝露対照と比較して、小核数は有意な水準で増加し、一方で集団(ⅲ)では、1000BNC当たりの小核数は、シャム曝露対照での観察と有意な違いはなかった。
  3. 同様に評価の統計的基礎を拡大するためコメット形成の測定としてのオリーブテールモーメントの平均値を、計算し、それぞれ (ⅰ)全てのSAR実験( 0.2 W/kg, 1.0 W/kg, 1.3 W/kg, 1.6 W/kg, 2.0 W/kg, 3.0 W/kg) (ⅱ)高いSAR(1.0 W/kg, 1.3 W/kg, 1.6 W/kg, 2.0 W/kg, 3.0 W/kg) 又は (ⅲ)0.2 W/kg 又は 1.0 W/kg の低いSAR における異なる実験グループでの曝露比較細胞について計算した。(ⅰ)と(ⅱ)両方のグループでは、シャム曝露対照と比較して、コメット形成は有意な水準で増加した(集団(ⅰ)p<0.01; 集団(ⅱ)p<0.001)。一方で集団(ⅲ)においては、シャム曝露対照での観察と有意な違いはなかった。
  4. 継続曝露の影響についての実験では、24時間のより長い曝露期間と比較して、小核誘導とコメット形成への顕著な影響は、ない(MN)又は少ない(Comet)。小核頻度は72時間曝露後に更に増加した一方で、24時間曝露と比較して72時間曝露後のコメット形成は、より少ない発現だった。
  5. RF-信号の影響についての実験は、SAR 1.3 W/kg での全てのRF-信号、 例 連続波(C.W.), C.W.5min on/10min off, GSM-217 Hz 及びGSM-TALK による、コメット形成と小核誘導についての類似影響抑制を示した。
  6. HL-60細胞での活性酸素種(ROS)の検知を行う逐次的方法を採用することにより、RF-EMF曝露に伴う細胞内のフリーラジカル生成増加が、それぞれ蛍光ローダミン(DHR 123 分析)及びoxidized nucleotide 8-oxoguanosineのフローサイトメトリー検知により、明白に証明することができる。
  7. RF-EMF曝露(1800MHz,1.3 W/kg,24時間)は、細胞倍加時間とHL60細胞の酵素チミジンキナーゼの活性には影響がなく、RF-EMF曝露は細胞成長率に影響を与えないことを示す。
  8. RF-EMF曝露(1800MHz,1.3W/kg,24時間)は、HL60細胞にアポトーシスを誘発しない。
  9. 調査したSARエネルギー範囲において、in-vitro条件で使用したRF-EMFは、細胞進行や細胞増殖の細胞周期分布に影響することなくHL60細胞において遺伝子毒性がある。
  10. 例えば携帯電話電磁場に対する頭の曝露部位といった任意の組織10gの局所SARは、無線被曝防護基準によると 2 W/kg を超えるべきではない。明白に、HL-60細胞でのRF電磁場の遺伝毒性影響についての我々の発見は、これらの許容値以下の局所SAR水準にて示されている。
  11. HL-60細胞株の遺伝子毒性についてのこれらの結果は、他の細胞、特に初代細胞、当然に生物全体には、自動的に当てはめることは出来ない。
  12. タンパク質発現における明白な違いが、対照群及びシャム曝露細胞との比較で示された。遺伝子分析によっても示されたように、これは、RF-EMF曝露がこれらの細胞において翻訳段階と同様に転写段階においても、影響があることを示した。機能分析に関するタンパク質発現における変化の解明は、分子病理学的機序の理解に役立つであろう。
5.2.2 ヒト線維芽細胞とラット卵母細胞(参加者3)

 我々の結果は、提案された曝露安全水準以下でのRF-EMFsの遺伝毒性作用を暗示する。

  1. RF-EMFは、ヒト線維芽細胞とSV40変換ラット卵母細胞において、一本鎖DNA切断及びDNA2本鎖切断を誘発することができた。ELF-EMFとは対照的に、遺伝毒性は、連続曝露でも観察できた。
  2. それに加えて、ELF-EMF曝露細胞で見られた、曝露延長(16-24時間)でのDNA鎖切断レベルの減少は、RF-EMF曝露後では示されることが出来なかった。これらの結果は、RFとELF-EMFの遺伝毒性作用の間での作用機序の違いを示すことができる。
  3. EMF暴露後の異なる細胞種類の間における遺伝毒性影響の違いは、ELF-EMF曝露細胞と同様に、RFにおいても見ることができた。
  4. 線維芽細胞へのRF-EMF曝露は、ELF-EMF曝露細胞で見られるよりも、染色体異常のより高い発生を誘発することができた。ミトコンドリア膜電位へのRF-EMF曝露影響を、観察することはなかった。これらの知見は、ELF-EMFで得られた結果と一致する。
5.2.3 ヒトリンパ球と胸腺細胞(参加者8)

 全体的に、得られたデータは、RF-EMF曝露への胸腺細胞の無反応とヒトPBMCsの非常に低い反応を示した。PBMCsに関しては、いくつかの結果は、高齢の提供者からの刺激したTリンパ球においてCD95表面分子の数へ影響の可能性を示唆した。更に、RF曝露培養にて、特に単球で生成された、IL-1 b シトキンの減少により示されたように、別の結果ではリンパ球に関して単球のRFに対するより大きな感受性を示唆しているようである。将来の研究は、これらの種類のヒト細胞への更なる影響の分析について取り組む事ができるだろう。


5.2.4 ヒト神経芽腫細胞株NB69と神経幹細胞(参加者5)
  1. 単独で与えた時に, SAR 2 W/kg でのGSM基本シグナルへの曝露は、レセプターR2とR3を示す細胞の数に有意に影響することなく、NB69細胞とNSCの両方において、線維芽細胞成長因子レセプター1(FGFR-1)を示す細胞の数において減少を誘発した。R1への影響の大きさは、20 μg/ml bFGF により誘発されるものと同等であった。GSM基本波は、細胞総数や細胞活性に、有意に影響しないことから、上記のデータは、FGFR-1でのRFにより誘発された影響は細胞の数の減少によるものではなく、レセプター1の細胞発現の損失であることを示唆する。
  2. SAR 2 W/kg でのGSM 1800-CW シグナルへの曝露は、上記で説明したGSM 1800基本シグナルに対するものと同等のGFGR-1の表現への影響を誘発した。それぞれ、SAR 2 W/kg と SAR 1 W/kg におけるGSM-TALK とDTX シグナルへの曝露後において、FGFR-1の表現における有意な影響はなかった。異なるGSMシグナルにより得られたデータは、細胞反応は調査した低周波変調には依存しないことを示す。
  3. GSM基本シグナルへの曝露は、培養後9日目に、神経幹細胞由来の乏突起膠細胞と星状膠細胞に、特定の、形態変化を誘発した。これらの結果は、SAR 2 W/kg でのGSM基本シグナルへの曝露はは、NSCにおける分化を促進する。影響は、FGFレセプター1の表現において、短期変化を通じて働いているだろう。対照的に、アンチ-ベータ-チューブリン 免疫体にて示されたように、GSM基本シグナルは、NSCの神経子孫やNB69細胞の細胞分化には、影響しない。
5.2.5 異なる起源の脳細胞とヒト単球(参加者9)
  1. 我々の結果が強く示すのは、自発的アポトーシスの過程は、GSM携帯電話関連のシグナルの生物学的対象とはならないということだ。これは、神経系と免疫系両方からの異なる細胞株と初代細胞にて、示されたことだ。
  2. 星状細胞株での誘導型一酸化窒素合成酵素(NO52)の活性と発現に基づくと、GSM様のシグナルは、神経細胞の炎症過程を”活性化”しない。
  3. 異なる哺乳類の神経細胞において熱ショックタンパクでのGSM様のシグナルの影響は、何の証拠も見つからない。
  4. 全てのデータを基にすると、低レベルGSM-900シグナルへの曝露は、熱ショックタンパクや窒素酸化物、アポトーシスを伴う経路を経由する、腫瘍発達促進や神経変性をもたらすことはありそうもないというのが、我々の結論である。
5.2.6 マウス胚幹細胞(参加者4)
  1. 特定の状況における現在適用されているGSM被爆レベルは、少なくともin vitro での胚幹細胞から生成した細胞では、生物学的影響を誘発するかもしれないことを、我々が提出したデータは示している。
  2. p53機能の欠損にて規定される多様性胚幹細胞の遺伝子構成は、遺伝子発現レベルにてRF-EMF関連の細胞反応に影響するが、一方で野生型細胞は無反応である。制御遺伝子のmRNAレベルのRF-EMFが誘発する変化が、正常化若しくは補正されるかもしれないかどうか、または、in vivoでの持続的生物学的影響となるか、については未解明のままである。
  3. ES由来の神経前駆細胞のRF-EMF曝露は、bcl-2介在抗アポトーシス経路に影響して、Nurr1抑制により増殖抑制、DNA損傷誘導的遺伝子GADD45、神経分化に影響する。
  4. RF-EMFへの短い曝露は、ES由来の神経前駆細胞にてDNA2本鎖切断を誘発させた。(中性コメット分析による計測)
5.2.7 ヒト内皮細胞株E.A.hy926とE.A.hy926vl(参加者6)
  1. RF-EMFは外部ストレス要因として細胞に認識されているようである。その理由は、曝露への反応において数百のタンパクのリン酸化反応状態が、上方若しくは下方へ変更されており、これらのタンパクの特定は、そのうち行われるであろう。
  2. RF-EMFは、細胞ストレス反応の弱い誘導因子であるようだ。その理由は、細胞ストレス反応のマーカーとして知られている熱ショックタンパク 27(hsp27)のリン酸化と発現を増加させるからである。
  3. RF-EMFに誘発されたHsp27のリン酸化は、上流ストレスキナーゼp38MAPKにより制御されているようだ。
  4. RF-EMFに誘発されたhsp27活性化は、Fアクチンストレス・ファイバーの細胞安定化において下流の生理的過程に影響を与え、言い換えれば、細胞の大きさと形状を変化させて(細胞を丸くさせて)、いるようだ。
  5. 個々のタンパクの質量分光学同定を伴う二次元電気泳動によるcDNA発現アレイとタンパク分離を用いて、数ダースの細胞骨格の 遺伝子/タンパク 発現における変化はRF-EMF曝露に誘発されており、細胞骨格はRF-EMFの標的であろうことを見つけた。
  6. RF-EMFに誘発されたhsp27のリン酸化に続く、細胞核へのhsp27の転座では、遺伝子発現過程へ干渉しているようだ。
  7. 個々のタンパクの質量分光学同定を伴う二次元電気泳動によるcDNA発現アレイとタンパク分離ーハイスループットスクリーニング技術により見つけた数十の遺伝子とタンパクの発現において、RF-EMFは変化を誘発している。
  8. RF-EMFに誘発された遺伝子とタンパクの発現の変化は、細胞の 遺伝子型/表現型 に依存しているようであり、ある種類の細胞はより多く、ある種類の細胞はより少なくRF-EMF曝露に反応することを示唆する。
  9. RF-EMF曝露は変化を引き起こすが、一方でCW-EMFが変化を引き起こさないので、細胞発現におけるRF-EMFに誘発された変化は、変調に依存しているようである。
  10. 細胞ストレス反応を引き起こすRF-EMFの能力は、そのエネルギーの低さにも関わらず細胞が曝露を認識することを示すが、ストレス反応の誘発そのものが潜在的健康リスクの標識であるとは考えることができない。
  11. トランスクリプトミクスとプロテオミクスのハイスループットスクリーニング技術
  12. の使用が、細胞内のRF-EMF曝露の潜在的標的を決定するに当たり有用な技術であることを、我々は事実上証明した。
5.2.8 cDNAアレイにより分析したヒト細胞の遺伝子発現におけるRF-EMFの影響(参加者12)

 ここに提出する遺伝子発現分析は、EMFs- RF-EMFとELF-EMF ヒト細胞において遺伝子発現を変化させることを示す。in vitro 研究は健康リスクについていかなる結論も許さないが、その結果は、EMFsにより引き起こされる細胞内の詳細な分子変化を解明する更なる実験の重要な前提条件である。

 最も明白な変化は、エネルギー代謝とリボソームの生合成に関わる遺伝子の発現にて検知された。影響が一時的であるか、細胞増殖のようにより劇的な変化をもたらすかについては、分子分析によりさらに研究されるべきである。EMF曝露後のシグナル伝達がどのように動作するかについての最初の考察についても同じことが当てはまり、生物学的統計分析に言及すると、Ca-経路(PIP3,PKC,,ERK MAP そして別の経路も関連するかもしれないが、我々の分析ごではそれは明確ではない)EMF曝露後の制御に関与しているかもしれない。アクチン細胞骨格(例 ストレス・ファイバー)とECMはひょっとしたら、下方制御されて、細胞の脱分化をもたらすかも知れず、繰り返すと細胞の成長と増殖にとっては重要である。アクチン細胞骨格は異なる種類の細胞で異なる働きをする(接着,非接着細胞、細胞移動、etc)、それ故より特定的な分析を用いて調査すべきである。


5.2.9 概要(参加者1)

 REFLEX計画により得られたRF-EMFデータは、以下の結論を与える。

  1. RF-EMFは、線維芽細胞、HL-60細胞、ラット顆粒膜細胞、マウス胚幹細胞由来の神経前駆細胞に遺伝毒性がある(参加者2,3,4)。小核頻度と一本鎖DNA及びDNA2本鎖切断の顕著な増加により、SAR 0.3 と2 W/kg の間のRF-EMF曝露に対して、細胞は反応する(参加者2.3)。線維芽細胞の染色体異常も、RF-EMF曝露後に観察された(参加者3)。HL60細胞において、RF-EMF曝露に伴うフリーラジカルの細胞内の生成の増加は、明白に証明された(参加者2)。
  2. DNA合成、細胞周期、細胞増殖、細胞分化、細胞機能、免疫細胞機能へのRF-EMFの明白な影響は、研究した細胞システムでは見られなかった(参加者2,3,4,5,6、8)。神経前駆細胞でのNurrlの抑制による神経分化とDNA損傷誘導性遺伝子GADD45と成長抑制にRF-EMFが影響するかもしれない徴候もいくつかあった(参加者4)。
  3. アポトーシスへのRF-EMFの明白な影響は調査した細胞システムには見られないことが観察された(参加者2,3,4,5,6、8,9)。RF-EMFによって、神経前駆細胞のbcl-2介在抗アポトーシス経路(参加者4)、ヒト由来の内皮細胞のp38MAPK/hsp27ストレス反応経路(参加者6)、に何らかの影響があるかもしれず、アポトーシスの抑制効果を行使するかもしれない。
  4. SAR 1.5 W/kg のRF-EMFは、神経前駆細胞のニューロン遺伝子の発現を下方制御して、p53欠損胚幹細胞の初期遺伝子発現を上方制御するが、野生型細胞ではそうならない(参加者4)。ヒト内皮細胞株のプロテオーム解析は、RF-EMFへの曝露は、多くの特定されていないタンパクのリン酸化及び発現を、変化させていることを示した。これらのタンパクの中には、細胞ストレス反応の標識である、熱ショックタンパクhsp27がある。全てのゲノムcDNAマイクロアレイとプロテオーム解析の結果は、細胞分裂、細胞増殖、細胞分化に役割を果たす遺伝子のいくつかの集団を、EMFが活性化させるかもしないことを示した(参加者2、6、12)。

 これらをまとめるとREFLEX計画の結果は、in vitro 研究で得たものだけであり、それ故、現在有効な安全基準以下のRF-EMF曝露が引き起こす人々の健康リスクの結論に関しては適当ではない。しかし、研究者達は可能性があるという範囲には近い仮説へと進んだ。更に、動物及びヒトのおけるあらゆる種類の慢性病と機能障害の発達の基礎となり得る病態生理学メカニズムを我々が全く認識していないという主張を誰かがすることについての正当化理由はない。




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